『君の名は。』考察
1. はじめに
『君の名は。』存外に良かった、本当に良かったので考察したい。 この映画に言及するためにはネタバレするしかしないので、ネタバレします。
2. 流れ
2-1. 視点
「映画観て即結婚」「映画の半券を見せるとラブホ代が安い」などの超速報がありますが、これは絵が綺麗なSFですよね。そういう視点でした。
まずここから始めていきたい。
2-2. 流れ
話の流れを確認すると、
- 👨👩「 入れ替わっちゃった〜〜???」
- 👩「デートまでこぎつけたわw」👨「」
- 👨「デートだめだったし電話繋がらんわ」
- しばらく音信不通
- 👨「夢に出てきた場所? いったるわ」
- 👨「完全に理解」
- 👨「あの日の三葉になっちゃった!!!! 生きるぞ」
- 👨👩「あ〜〜〜っ!!」
- 👩「体戻りました完全理解」
- 救われた
- 数年後
という感じですか。
3. 人物について
-
三葉さん
これが本作の主人公。神社の娘というのが大きなポイントです。
-
滝くん
これはただの男子高校生。建築系を目指してる点以外は普通だと思う。
-
奥宮先輩
滝くんのバイト先の先輩
-
克彦
三葉さんの同級生。テッシ。建築会社の息子というのが彼の重要な立ち位置。
序盤で「主役は三葉」などとメタ発言をしたり仕事をしたり極めて有能
-
早耶香
三葉さんと男1の同級生。とりあえず放送してくれる。
-
ラーメン屋のおっさん
ラーメン屋のおっさん。糸守出身だったり車を出してくれたりラーメンを提供してくれたり有能。
4. 考察
話の序盤は入れ替わりに気づき、戸惑い、遊び、と非日常を楽しむ場面です。 ぶっちゃけここはお楽しみパートで、"入れ替わり"という装置を用いたお遊びだと思います。
このなかで克彦くんは「主役は三葉だもんな」という発言をします。これは神社でおこなわれる舞への言及ですが、主軸が三葉くんにあることの示唆とも思えます。 舞では三葉くんと四葉くんが口嚼ノ酒を生成します。この酒が三葉さん達の魂の半分である、というおばあちゃんの話は実は極めて重要なんですねぇ。
そして、奥宮先輩と滝くんのデートの失敗。三葉さんに電話を入れたが繋がらず、日常パートがおわります。 これは滝くんは奥宮先輩が好きだったが、夢(夢ではない)の刷り込みにより三葉さんに想いが寄ってしまったのを奥宮先輩に見抜かれてデートが終わるんですねぇ。 後述の宮水家の血筋にこれは大きく関係するのではないかと考えられます。
一回しか観てないので記憶があやふやですが、このへんで宮水の御神体に口嚼ノ酒を奉納した気がします。 概念として重要な"結び"の話をおばあちゃんがしてくれます。また、おばあちゃん、一葉さんも過去に入れ替わりがあったことを示唆します。 御神体が遠く、カルデラのような地形の中央にあるのも重要ですねぇ。 選挙やってたパパも民俗学者だったという話はこのへん?
さて、視点は人格が三葉くんで体も同じくの三葉くんに戻ります。 夏祭りの日。彗星が最も近づく日。
ここでちょうど、滝くんの時間軸で3年前の10月4日に彗星のかけらが隕石となって糸守町を破壊するんですねぇ。
思い立って夢で過ごした街に滝くん一行は行きます。そして現実(過去)とつながります。 街が破壊されるというのが個人的に好きなので、町がクレーターになって双子池になってるシーンに思わずニッコリしてしまいました。 滝くんが描いた絵から糸守に気づいたり、滝くんを運んでくれたりとラーメン屋のおっさんは有能や。
ここで滝くんは、宮水の御神体の場所にならなにかあるかも、とひらめきます。そして三葉の魂の半分である口嚼ノ酒を飲みます。 どちらが三葉くんのでどちらが四葉くんのというのは、自分が置いたんだからもちろん覚えているわけですな。
そしてすっ転んだ拍子に御神体のある祠の壁画に滝くんが気が付き、時間がぐにゃぐにゃになります。 壁画には過去の彗星の災害が描かれているんですねぇ、エモい…。 ここで明らかになる過去です。 これまでの作中でも触れられたとおり、糸守にもともとあった湖は過去の、1200年前の隕石によるものです。 そしてカルデラのような地形の中央に御神体があったことについて、これは更に前の隕石によるものかと思われます。
つまり、宮水家は隕石による災害から市民を守るために生まれた家系なんですねぇ。
そしてこの血筋の特徴は入れ替わりと口嚼ノ酒です。
前者、入れ替わりはつまり滝くんのような糸守を助けてくれる人間の選択という役割を果たします。 少なくとも隕石がやってくる代の巫女は未来から人間を引っ張ってくる必要がありそうですね。 一葉さんもこの血筋の機能に無自覚だったように、三葉さんも無自覚なのでまずインシデントが起こる必要がある。 そして起こってから、未来からの援護をしてもらう必要があると。 いや〜でも夢(夢ではない)の刷り込みにより巫女のことを好きにさせちゃうってのは革命的だな〜〜!! 力強い寝取りだ。
この人選も適当な人間ではダメで、滝くんは建築を学んでいたため"夢"の景色を忠実に描画することができました。 また三葉さんの父のキャラクターも。おそらく三葉さんの母である二葉さんとの出会いはきっと彼女の"入れ替わり"によるものだったはずです。 そして父氏は民俗学者。1200年という周期は予想できないと思うので、毎代口嚼ノ酒を奉納していたはずです。これを生成する舞は公開されていたので、父氏も知ったのでしょう。 この特徴を民俗学者だからピンとくることができ、二葉さんに出会えたのでしょう。町長? になって避難を最終的に助けたのも、二葉さんの(無意識の)人選の成果かもしれません。
そして後者、口嚼ノ酒はバックアップのようなものですね。 選ばれた未来人、つまり滝くんとは10月4日を過ぎると巫女、つまり三葉さんと交信できなくなります。隕石で死ぬので。 そこで口嚼ノ酒なんですねぇ。 魂の半分を未来人が飲むことで、未来人がすべて知った状態で過去に戻ってなんやかんやするわけですねぇ。 極めて重要な装置です。 水宮家が女系なのも、この酒の生成があるからだと思います。神事でものをつくるといえば巫女! というわけですね。 逆に男は"入れ替わり"で引っ張ってこれるからOKということ。
この血筋と水宮家の女性の名前についてですが、一葉さんから二、三、四とナンバリングされています。 これはやはり、ナントカの大災害(忘れた)のせいで何かがズレたのかな、という考えがあります。 そして四葉くんの存在については、三葉くんがトチった場合のスペアなんやろなぁ…という気持ちが湧いてきます。
魂の半分を得て過去に戻ってきた滝くんの人格、三葉さんの身体は災害からみんなを守ろうと奔走します。 テッシが有能なので町を一部破壊します。有能ですね。しかしどうしても限界がある。そこで滝くんの人格は御神体に向かってみる。 そして"かたわれどき"なんですねぇ。お遊びパートとは言ったが意味はいくつか持っている。 これは"魂の半分(かたわれ)を取り込んだ人間と逢える時間"、つまり巫女と未来人が逢える時間という意味なんだよな。
ところで災害を守るために神社を作る、というのは極めて日本的ですね。やっぱ神社最高だな…。
で、なんやかんやで全員無事ということで、未来、つまり滝くんの時間軸+数年後になる。 奥宮先輩の薬指に指輪があるのがなんとも憎らしい演出ですね。 そして最後に出会ってENDということで。これは宮水の血が次世代に渡ったことの示唆でしょう。"結び"ですね。
5. 評価
実は観る気は全然なくて、当日の未明に男数人で見に行こうということになったのでついて行った。 観る気がない理由としては
- 異性愛
- RADWIMPS
充分ですね。
「ま〜〜たいつもの異性LOVE新海作品か」ということで劇場に足を運ぶ気は0で行った。 しかもRADWIMPSは好きじゃないのでアレ。
なので観る前と観た後で評価が180度回転してしまったわけですなぁ。 考察を書くほどに。 "入れ替わり"についてTS界隈が盛り上がらないというのは、やはりこの"入れ替わり"自体は本質ではないですからね。終盤は入れ替わらんし。はい。
予告が恋愛を激プッシュしたのはなんとも巧妙ですね。SFじゃねーか!!
ただ伝えたかったことは弱いなと思いました。 "RADのPV"という感想はまさにそれな気がします。 伝えたかったことは薄いですが、作品そのものはメチャメチャに面白かったので、評価としては◎です。
一緒に観た、しっかり新海作品を予習してきた@ioriveur さん曰く 「~~新海誠の手癖はだいぶ克服した。ただ新たな手癖ができてしまった~~新海誠の手癖は直ってないどころか新たな手癖がついた」(本人により訂正されました)など言ってました。ボクは新海作品観た記憶がほとんどないのでなんとも言えないですが。
6. おわりに
いやぁ本当に面白かったです。 シンゴ・ジ・ラもなかなか面白かったですが、個人的にはシンゴよりも面白かったと思う。 シンゴについて"恋愛要素がなくテンポがよかった"という評価をした人がいますが、今作品も恋愛要素によって妨げられる部分というのはなかった気がしますので、同じような評価ができるんじゃないかなと思います。 "入れ替わり"による魂のペアリングは血による機能なので恋愛要素とは全然違うかなと。
でもこれSFって言っちゃうと即ネタバレになっちゃうんですよね。 予告でもSF感を忍ばせていただけに。だから感想は「絵が綺麗だった」くらいしか言えない。 やっぱりなんでも観てみなきゃってことですね。 次は『少女』と『スーサイド・スクワッド』と『怒り』と『HIGH & LOW』を観たいですねぇ。
おわり
考察をまとめたことがないので、考察ってこんなかんじで良いんですかね。